法律実務の覚書

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成年後見と引き落としの口座名義人について

成年後見人が引き落としの手続きをするに当たって、口座名義人を所定の用紙に記入する。

前提としてかかる口座は成年後見人が、後見人の届出を行っている。

りそな銀行(同系列の近畿大阪銀行も)では、設定時に口座名義を原則として本人名だけでなく本人名成年後見人〇〇と変更する。

一方、ゆうちょや三菱等多くの金融機関は、口座名義人は本人のままで、法定代理人が手続きをできるように設定するに留まる。

何が言いたいかというと、引き落としの用紙にもその口座名義人を意識して記載を要する。

りそな系であれば、口座名義人は本人だけでは通らないし、ゆうちょでは、逆である。

考えれば当たり前なのだが、忘れがちになる理由として、引き出し手続きをする際には、どちらも本人名成年後見人〇〇と書いて手続きする。(当たり前ではあるが)

このときはどちらでも成年後見人も書くので、引き落としのときも同じように考えがちであるという罠である。

間違えれば、引き落としができない。当たり前のことではある。

 

賃貸借物件の傾斜と瑕疵担保責任

入居してみたら、家が傾いていたなどという場合、賃貸借契約の解除が、瑕疵担保責任を理由として可能な場合がある。

民法559条によって、売買以外の有償契約である賃貸借契約についても瑕疵担保責任が準用されて適当される。

瑕疵担保責任による解除には

1特定物についての賃貸借契約の成立

2契約成立時に目的物に通常人の普通の注意で発見できない瑕疵があったこと

3解除の意思表示

4その瑕疵により契約目的が達成できないこと(こちらは抗弁に回るという説もある)

が求められる。

 

家が傾いている場合、一見で分かるというような場合でなければ、発見できない瑕疵であると言えようが、それが目的不達成と言えるかである。

中古物件の売買契約の事例において1000分の8の傾斜を瑕疵と判断した裁判例があり、その事例によると、1000分の5を超えると、一般に、壁や柱の間に隙間が生じたり、壁やタイルに亀裂が入るそうである。

(とはいえ古い物件の場合、亀裂が多少あることは少なくなく、住むに当たって問題ないことも多いので、亀裂があるからといって賃貸借の目的達成不能となるとはいえないだろう。)

 

国の基準(平成12年建設省告示第1653号)では1000分の3未満は、「構造上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」とされおり、1000分の6未満を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する」としている。

逆に6/1000以上の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」としている。

 

総合判断でもあるので、一か所の傾きのみだけで判断はできないが、一つの目安として1000分の6を超えてくると、これは瑕疵があるとして解除の対象となってくる可能性は十分にあると言えようか。(このくらいに傾きになると球体の多くは転がるそうである。そうなれば、住むに当たって大変不便であるし、住居としての目的を達成できないとの判断もしやすいかもしれない。)

 

 

 

障害者扶養共済制度と税金

障害者扶養共済制度の掛け金は小規模企業共済等掛金として扱われ、所得税・住民税の計算において掛金全額が所得控除の対象です。(税額控除ではありません。所得が対象。)

その後、扶養者が亡くなった後に、障がい者本人に支給が始まった場合(年金)、もしくは障がい者本人が先に亡くなった場合に加入者への支払(弔慰金)、いずれについても全額が所得税・住民税ともに非課税となります。ただ、弔慰金の金額はあまり高くはなく、この場面では損してしまう可能性が高いです。

加入者が亡くなった後、障がい者に対しては終身で年金支給されますので、障がい者が長生きすれば、かなり有利な制度です。

年月日推定10時死亡 相続の登記原因日付

推定年月日死亡の場合は、死亡の日が推定ですので、

推定年月日相続となりますが、

年月日推定10時死亡のような場合は、時間が推定なだけで、日は特定できているので

通常通り「年月日相続」で登記ができます。

 

破産前の換金目的のクレジット利用は、252条1項2号の換金ではなく5号の詐術等の問題になりやすい

支払い不能になりつつある状態で、現金を求めて、クレジットカードでの物品購入&現金化という行為がされたりすることがある。

売却して換金しているので、免責許可事由としては2号にあたりそうだが、どうだろうか。

2号では、著しく不当な金額での売却を要件としているが、お金に困って現金化を狙ってするときは、容易に高額のお金に変えられるような物を購入するので、元々の価額の90%以上の現金を得ることが多いだろう。

とすれば、著しく不当な金額での売却などなされておらず、経済的不合理性は見られない。

故に、2号での議論で妥当するケースは稀であって、寧ろ5号の詐術の方が可能性が高い。

支払が無理だと気付いていながら、信用取引を行う。また、その前提として欺罔行為を要求するが、これについては不告知で足りるという説と積極的な嘘などを必要とする説がある。

条解破産法では、積極性を要求することが妥当ではないかとのことだが、不告知で足りるとする説でも消極的な動きでしかなかったことは、裁量免責における有利な事情になるので、どちらの説であっても結果的には、大した差異は見られないようではある。

債権譲渡通知前に対抗できる事由は再々抗弁ではなく、抗弁になる。

債権譲渡通知が到達する前に前債権者に足して対抗できる事由は新債権者に対しても対抗できます。(民法468条2項)

 

感覚的には、

抗弁「権利抗弁として前債権者からの通知がないと債権者として認めない」

再抗弁「前債権者からの通知の到達」

再再抗弁「通知到達前の事由を対抗」

となりそうです。

 

ところが、

抗弁「前債権者に対する事由の対抗」

再抗弁「前債権者に対する事由の発生前の譲渡通知の到達」

となるのが、正しい。

 

なぜ、再再抗弁とならないかですが、再々抗弁というものが、相手方の再抗弁の存在を前提として、その効果を打ち消して、元の抗弁の効果が発生するというものですが、これを再再抗弁として位置付けるとなると、最初の抗弁である「債権者として認めない」が復活するという効果が得られる必要があります。

しかし、債権者として認めないということについては、再再抗弁で復活しませんよね。

 

ですので、時系列的論理では、再再抗弁になりそうですが(譲渡通知がされていることの抗弁が出てきて初めて議論になるので)、抗弁の法的な効果上、民法468条2項の抗弁は別の系統の抗弁として位置付けることになるわけです。

 

抹消登記の請求の趣旨は「原告に対し・・・」という表現はしない

移転登記請求の場合、「被告は、原告に対し、別紙物件目録の土地について、年月日〇〇を原因とする所有権移転登記手続きをせよ」などとして、登記原因と当事者の特定も行う。

ところが、抹消の場合、原告と登記原因が請求の趣旨に出てこない。

「被告は、別紙物件目録の土地について、所有権移転登記の抹消登記手続きをせよ」となる。

原告に対してと別にあったっていいじゃないかとも思う。

登記申請書では、権利者・義務者と表示されるのであるから、移転とそういう意味では異ならないし、登記原因だって、錯誤であったり、不存在であったり、抹消の場合でもなんらかの登記原因を書く。登記との連動を考えれば、書いてた方が、無用な混乱がないような気もするが。

移転の場合、誰に移転するのかという特定の要請があるので、こちらは原告に対してと必要であると言われるが、抹消はそういう要請はないのかもしれないが、わざわざ移転と異なる表記にする積極的な理由にはなってないように思う。