賃貸借物件の傾斜と瑕疵担保責任
入居してみたら、家が傾いていたなどという場合、賃貸借契約の解除が、瑕疵担保責任を理由として可能な場合がある。
民法559条によって、売買以外の有償契約である賃貸借契約についても瑕疵担保責任が準用されて適当される。
瑕疵担保責任による解除には
1特定物についての賃貸借契約の成立
2契約成立時に目的物に通常人の普通の注意で発見できない瑕疵があったこと
3解除の意思表示
4その瑕疵により契約目的が達成できないこと(こちらは抗弁に回るという説もある)
が求められる。
家が傾いている場合、一見で分かるというような場合でなければ、発見できない瑕疵であると言えようが、それが目的不達成と言えるかである。
中古物件の売買契約の事例において1000分の8の傾斜を瑕疵と判断した裁判例があり、その事例によると、1000分の5を超えると、一般に、壁や柱の間に隙間が生じたり、壁やタイルに亀裂が入るそうである。
(とはいえ古い物件の場合、亀裂が多少あることは少なくなく、住むに当たって問題ないことも多いので、亀裂があるからといって賃貸借の目的達成不能となるとはいえないだろう。)
国の基準(平成12年建設省告示第1653号)では1000分の3未満は、「構造上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」とされおり、1000分の6未満を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する」としている。
逆に6/1000以上の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」としている。
総合判断でもあるので、一か所の傾きのみだけで判断はできないが、一つの目安として1000分の6を超えてくると、これは瑕疵があるとして解除の対象となってくる可能性は十分にあると言えようか。(このくらいに傾きになると球体の多くは転がるそうである。そうなれば、住むに当たって大変不便であるし、住居としての目的を達成できないとの判断もしやすいかもしれない。)