法律実務の覚書

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相続における戸籍の見方と登記手続

相続における戸籍の見方と登記手続

(日本加除出版)

評価98点

この本は高い。だが、買って後悔するという法律実務家はおそらくいないと思われる。

相続や養子縁組、婚姻によって、戸籍にはどういった記載がされ、または、逆にこういう記載があるという場面では、それがどういう意味を持つのかということが、かなり詳細に解説されている。

特筆すべきは、旧民法時代の戸籍の見方である。

民法から新法施行後への沿革や途上での応急措置法において、実体上どういう扱いがなされ、それがどう戸籍に反映されて然るべきだったかが、極めて多様なパターンで載っている。

「反映されて然るべきだったか」というのがポイントであり、実際の古い戸籍では、記載漏れが頻繁に生じている。

例えば、旧法時代に戸主男性と養子縁組がなされた場合、旧法の夫婦共同縁組が適用されて、妻の養子にもなっている。そうすると、養父母として戸主とその妻が記載されて然るべきだが、これが書かれていない。

こういったことが古い戸籍では頻発する。

どういった身分行為がなされたかは、戸籍の記載を見て、遡って推理していくような作業が必要となるが、その時に、本来であれば、何が書いてあって然るべきだったのかという知識があると、その戸籍の謎は、かなり正解に近づく。

 

戦後以降の戸籍でも、字の間違いなどは、頻繁に見かけるが、本来各書くべきものを書いていないなどということはあまりない。

戦中、戦前の古い戸籍を追うことになると、旧法・応急措置法の知識が必要となるが、その解説とともに、それがどう戸籍に反映されるかについて考えられうるパターンは載せつくしたのではないかというくらい載っており、古い戸籍を解析する業務があったならば、この書籍は必須であると言って間違いないし、またほぼこれで解決すると言っても言い過ぎではない。

 

相続における戸籍の見方と登記手続

相続における戸籍の見方と登記手続