法律実務の覚書

法律実務の覚書

スポンサーリンク

労働関係訴訟の実務

労働関係訴訟の実務

(株式会社 商事法務)

評価 98点

労働関係訴訟について、多数の裁判官が、実務ポイントを解説している。

多様な類型において、その裁判例や通達なども引用して、一般的な裁判所の考え方を紹介した後に、主張・立証のポイントの解説がある。

この本で大変面白いのが、労働者側、使用者側双方から、主張・立証すべきポイントを裁判官の目線で指摘しているところと、主張・立証の方法が一般論ではなく、具体的な証拠の提出方法などにまで言及しているところにある。

 

主張ポイントについては、裁判官が主張ポイントを指摘し、さらに実務で運用で円滑な裁判が進展されるよう、主張しておいて欲しい点であったり、逆にありがちな不適切な主張ポイントまで言及していたりする。

例えば、休職命令の効力を争う場面で、訴状記載に当たって、原告側に主張立証責任がない部分でも、早期に争点を明らかにすべく、休職事由の不存在について、論じてあるとよい。早期の裁判所からの求釈明にも資する。といった指摘があったり、

証拠の関連では、労働時間の証拠の提出にあたって、タイムカードであれば直接的な証拠として、全て出してほしいが、メールやFAX送信時刻、タコメータなどの場合には、見ずらくわかりにくいので、その資料の提出方法にまで言及があったりする。

また、あまりよくない主張展開として、例えば、労働者か請負業者かといった主張に当たって、通達や裁判例の引用での一般論になりがちな主張展開が散見されるが、具体的にどういったことを主張してほしいかといったことが指摘されていたりする。

 

この本では、裁判官がどういう主張・立証を事案類型毎に予定しているかという点が、かなり垣間見れるうえに、労働者、使用者双方からの主張・立証ポイントを指摘しているので、一般的に労働者側のみ、使用者側のみと実務では別れやすく、一方側の考え方にどうしてもいきがちなところ、相手方側から見た事案というのが、裁判所という中立な立場から俯瞰されていることによって、ニュートラルに見ることができるという作用もある。

 

労働の法律問題については、この書籍はまず外せないと言っても過言ではない。

 

第1版 2012.6発売

 

労働関係訴訟の実務 (裁判実務シリーズ 1)

労働関係訴訟の実務 (裁判実務シリーズ 1)

 

 

 

第2版 2018.5発売